番外編:キャラバン隊は、フジテレビのお台場高等学校へ向った
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お台場にて |
1.出演依頼〜打ち合わせまで
それは2月の中旬だった。
頭の中はそろそろ、当初のキャラバン終着の地「イシガキ」を意識していた頃だった。
「フジテレビです…」
朝の情報番組「とくダネ!」のディレクター佐塚さんからだった。
私の活動を取り上げてくれるという。
一度話を聞きたい、とのこと。
もちろん、快諾。
そしてすぐに時間を作り、新宿で打ち合わせた。
1月から、週に4,5回の授業・講演が続いていた。
その合間に、日テレの撮影やら、FMの収録やら、産経新聞のマンガ掲載やら…
また馳浩文部科学副大臣や
公明党代表代行の浜四津敏子議員、山本香苗議員の授業ご視察も決まっていた。
忙しいときは忙しいものだ。
実は私は、全国ネットからの話は過去にいくつか受けていた。
しかし全国ネットはなかなか、最後まで話が進まないことが多い。
実際、同じフジテレビの「スタメン」からも話をいただいていて
何回かディレクターさんと電話で打ち合わせたが、途中で音信不通。
難しいのだ、全国ネットは。
いままでたくさんのニュースに取り上げられた。
しかし私の授業は基本的にいつも一緒なので
報道の仕方はいずれも似通ってくる。
@本日、ちょっと変わった(あるいはユニークな)授業が行われました。
A生涯賃金の差は「2億」です!えっ〜!
B自立と努力が重要です。
C生徒の声「絶対フリーター・ニートはやだ」
D私へのインタビュー「元気になって欲しい」
こうした流れだ。
だいたい私の授業は@のようにキワモノ(?)的な紹介で始まる。
まあ私には現場でのキャリア教育10年の蓄積があるので
若い人にはこうやるといい、こうやるしかないという裏づけがある。
それが今までとアプローチが違うからしょうがないが、
あまりにも
ユニーク、ユニーク
と連呼されるとなんだか収まりが悪い。
自分ではこれがベストと思ってる、今は。
それはともかく…
たくさんニュースに取り上げられて思ったが
本当に番組はディレクターさん次第だ。
切り口で、印象ががらりと変わるものだ。
熱心なディレクターさんに当たるとラッキーだ。
私に関心を持ってくれて、かつ、ご自身のシナリオがしっかりあり
さまざまな提案をいただく。
特に北海道文化放送、名古屋テレビ、NHK松山、関西テレビのディレクターの方には
いろいろ掘り下げていただいた。
ありがとうございます。
で、今回だ。
「とくダネ!」の担当ディレクターの佐塚さんとじっくり話し合った。
最初からかなり好意的な印象を受けた。
いろいろと質問をされた。
「そもそも、こうしたことを始めたきっかけは?」
「いつ頃からこうした授業スタイルに?」
「本当に伝えたいことは?」
佐塚さんとは同世代だったので会話は楽しいものとなった。
打ち合わせは盛り上がり、
どこか実際の授業風景を撮影できる学校を紹介して欲しい、ということになった。
わかりました。
で、別れ際だった。
佐塚さんが尋ねた。
「こんなボランティアみたいな形でまわっていますが
トリイさんのその真意はなんですか?」
私は、ちょっと深くなるけど、と断って話した。
確かに最初は学校の名前を売るとか
本が売れればいいな、と思って始めました。
しかし、講演や授業をするたびに
感謝の言葉を山ほど受ける。
するとだんだん、気持ちが変わってきたのです。
実は私は親から「バカだバカだ」と言われて育ちました。
こういうことを話すと「そんなことは言っていない」と親は言いますが
でも私の潜在意識にはしっかりと刻み込まれています。
私はその呪縛を解こうと、受験勉強を懸命にやりました。
バカではないことを、自分自身に証明しなければならなかったのです。
そうしていい大学に合格しました。
しかしそれは成功体験にはならなかった。
お勉強はたったひとりでするものです。
合格の喜びもひとりだけのものです。
そうした喜びは、本当の意味での自信になりません。
働き始めて、お客さんや仕事仲間が喜ぶ姿を見て
少しずつ自信というものが回復されてきました。
自分の存在意義を感じるようになってきました。
そしてこのキャラバンです。
これほどまでに、若い人達に感謝される。
知らないことを教えてくれてありがとう、といってくれる。
全国で講演するたびに、
私を縛り付けていたものが解かれていくのです。
周りに必要とされていることを感じることで
私は開放されました。
そうなんです、
このキャラバンは自分のために行っているのです。
そうしたマインドで私は中・高校生の前に立ちます。
ただ、フリーター・ニートの問題を扱っているだけではないのです。
そうしたことも含めて番組作りをしていきたい
という佐塚さんの言葉が私には嬉しかった。
2.リハーサル
ほどなくして佐塚さんより電話があり
どうせならスタジオで生授業をしていただきたい、というオファーがあった。
私は二つ返事でOKした。
授業には自信がある。
そうでなかったら、全国飛び込み授業なんて無茶なことはできない。
行った先がどうなっているか。
それは行ってみるまでわからないのだ。
私を招聘してくれた先生の熱が高くても、その他の先生は…、みたいな。
校長室に入るといきなり、
「わしはテレビが嫌いじゃ!」
といきなり怒られたこともある。
「キミは高校の現場が長いのだろうが、中学校はそれではダメだ
講義一辺倒では通用しない。まあ、がんばりたまえ!」
これから公開授業が始まるというのに、
平身低頭でそんな説教を喰らったこともある。
「今に見ていろ!」
心の中でつぶやいたものだ。
で、実際に私が授業を始めると子どもが熱中する。
それを目の当たりにした校長は、
「トリイ先生、いっしょに給食でもどう?」
となる。
いつもそんなものだ。
最初から逆風が吹いていたりする。
特に高校生は難しい聴衆だ。
「はやく終わればいいのに」
「どうせまた説教だろ」
「速攻寝よう」
そんな状況だ。
だからスタジオ生授業には全く躊躇しなかった。
どうせいつもライブだ。
編集撮り直しなんて一回もないのだ。
ありがたいことに10分も時間をくれるという。
NHKでは3時間スタジオにいて、結局2分しか私の時間がなかった。
それに比べ、今度はすべて私の時間だ。
それだけで嬉しい。
ただ条件が付いた。
「親向けの授業」
私は大人向け授業の方が得意だ。
実績もある。
しかし10分の大人向け授業とは?
いつも90分でやっているのに、それを1/9にできるだろうか。
私は「メンター論」を核にして授業を組み立て、提案した。
その授業を「とくダネ!」のスタッフの中で協議した結果、
とても面白いとのこと。
さらにアドバイスをいただき修正して、
プロトタイプが完成した。
よしOKだ。
そこでふと思った。
「とくダネ!」は視聴率がコンスタントに10%ある。
日本の人口約1億2千万人の10%というと、1200万人だ。
今までは多くて900名くらいだ。
これは大変なことになった。
で、どうするか。
決まっている。
練習しかない。
たった10分のために
私はそれこそ死ぬほどリハーサルをすることに決めた。
後悔したくなかった。
番組出演の後、
「ああ、もっと練習しておけば…」
というセリフなど絶対吐きたくない。
私はリハーサルを繰り返した。
最初はぎこちなかった。
聴衆がいない授業は無味乾燥だ。
でも、緊張感を持ってやる。
だんだん、形が見えてきた。
そこでビデオカメラを回した。
さらに、音声だけ抜き出しMP3プレーヤーに取り込んだ。
そしてこれを電車の中や移動中に繰り返し聞いた。
それこそ、繰り返しだ。
これがよかったようだ。
耳からの情報は潜在意識に滑り込む。
生放送中にパニックになっても
自然と口が動くようにしておきたかったのだ。
目標は150%の完成度だ。
番組で流すVTRの撮影も順調に進んだ。
埼玉県の東松山市立松山中学校で行った。
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放送1週間前の3/27に
フジテレビに出掛けた。
実際のスタジオをみせてもらった。
思ったより小さい。
なんだか安心した。
私の立ち位置を確認。
ここでやるのか。
自分がプレゼンしている姿をイメージした。
この風景を目に焼き付けておこう。
その後、会議室でリハーサルをした。
ストップウォッチ片手に3回授業した。
1回目、10分40秒
2回目、10分19秒
3回目、9分19秒
OKがでた。
私自身、手応えがあった。
その様子を見ていたチーフディレクターのM女史が、
「4月の番組改編の第1回目です。期待しています!」
これは大変なことになった。
しかし、期待には応える男でありたい。
3.ビビる
その2日後の3/29だった。
私のコーナーのプレゼンテーターである、立川談笑師匠が学校に取材に来た。
いろいろとインタビューをされた。
仕事風景も撮影された。
そして談笑師匠を相手に
実際の授業を行うことになった。
そのときに言われた。
「あ、月曜日はピーコさんか…」
ゲストコメンテーターの中では、ピーコさんが一番難しいという。
嫌われると、理屈ぬきでこき下ろされるらしい。
私はビビッてしまった。
それは10/22のトラウマである。
NHK総合「日本の、これから」という3時間の生討論番組だ。
私の発言は、泉谷しげるさんの
「なんじゃ、そのクイズは!」
という一言で粉砕された。
その瞬間、頭が真っ白になった。
どんな反論をされてもいいように
Q&A集をつくって準備してきた。
しかし、あのように根本からひっくり返されるような言葉は
まさに想定外。
またそんなことがあったらどうしよう。
そこで私はピーコさんの本を読むことにした。
「ピーコ伝」「ピーコとサワコ」(いずれも文芸春秋)
なに?
ピーコさんは音に敏感?
私のPowerPointは効果音が満載だ。
機械的な音は嫌いだという。
どうかな?
嫌がられちゃうかな?
いちいち、そんなことを気にしながら読んだ。
読むうちに、どんどんマイナス思考になっていった。
その間も授業のリハーサルは続けていたが
私の心配は、授業よりむしろ
「つっこみ」
芸能人のつっこみ。
根っこからひっくり返されるといやだなあ、と。
そんなことばかり考えていた。
4.「お台場高等学校」へ出発
「とくダネ!」は朝が早いので
フジテレビがホテルをとってくれることになっていた。
4/2の午後、私はお台場に出掛けた。
ものすごい雨が降っていた。
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ベイ・ブリッジを見ながら思った。
「そうか、『お台場高校』で少しやんちゃな生徒を相手に授業をすると思えば…」
リフレーミングだ。
枠組みの再構築。
すると気持ちが急に軽くなった。
とにかく10分だけは私の時間で
ノンストップで授業ができるのだから、そこに集中しよう。
授業なら今まで、さんざんやっている。
それを繰り返すだけじゃないか。
これ以降、私は緊張することがなくなった。
17:30にCX到着(フジテレビのことをCXというらしい)。
会議室で最終打ち合わせ。
当初、私のPowerPointファイルはそのまま使わず、
制作部でマルチビジョン用に作成する、ということだった。
しかし私のプレゼンタイミング等を考慮して
私のパソコンをそのまま持ち込むことになった。
これはこれで怖いことだ。
フリーズしたらどうする?
生放送ではミスは許されない。
そこで同じパソコンをもう一台持ってきてくれ、ということになった。
裏でディレクターが予備のパソコンを同時に操作し
万一私の使っているパソコンがフリーズしたら
瞬時にスイッチを切り替えるという。
危機管理である。
そうしたことも含めて
会議室で最終調整をした。
1回リハーサルをやりましょう、ということでタイムを計測。
ディレクターの佐塚さんが予備のパソコンを同時に動かした。
質疑応答を想定してやはり10分くらい。
もっと削った方がいいという。
明日は民主党の鳩山幹事長の生出演が予定されている。
その他、小学3年生の殺人事件、竜介死去など
ニュースが多い。
「私のこの携帯が鳴ったら流れるかも…」
とM女史。
できればもう少し削った方がいい。
でもこれ以上削ると、授業の流れが…。
テレビは思いっきり早口でもいいという。
もっと話すスピードを速めたら、と提案された。
まあ本番では緊張して早口になるだろうが、
気持ち、早めで、と決めた。
打ち合わせは19:00には終了。
ホテルに向う前に、フジテレビの社員食堂で晩ご飯。
カツカレーを食べた。
「今日はこれからどうするのですか?」
聞いてびっくりした。
これから会議をして、その後編集作業に入る。
終わるのは3:00なので
そのまま起きてリハーサルに入る、という。
放送前はだいたい1日おきにしか寝ないらしい。
大変な仕事だ。
ADの人も眠そうだった。
明日は早朝5:30から打ち合わせということになる。
私も早く寝なければ。
フジテレビの3階の出口から
ホテル・グランパシフィック・メリディアンにつながった道がある。
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フジテレビから見たホテル | ホテルから見たフジテレビ |
今日はここに泊まる。
近くて便利だ。
それにしてもリッチなホテルだ。
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ベッドもゆったりしている。
いいホテルを提供してくれてありがたかった。
窓からは夜景がきれいだ。
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明日はいい日になるだろう。
さあ寝よう、と思ったとき
ふっと不安が襲ってきた。
そこで、かつてよく唱えた呪文を繰り返した。
キャラバンを始めた当初、公開授業前にはいつもこれをやっていた。
念のため、そのおまじないの力を借りた、というわけだ。
5.生放送当日
4:30に起きた。
5時間は眠れた。
これだけ寝れば十分だ。
今日はよく晴れていた。
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フジテレビから見たホテル | ホテルから見たフジテレビ |
約束どおり5:30にフジテレビへ。
情報制作センターのフロアーでの打ち合わせに加わった。
みなさん、朝からものすごいテンションだった。
目が血走っている(というか、そんな雰囲気)。
冗談など入り込む余地がないくらい真剣だ。
それから撮影現場へ移動。
モニターが山ほどある部屋に入り、
そこでオペレーションのスタッフの方との打ち合わせにも加わった。
やはりものすごいテンション。
空気がピリピリしている。
その場で言われた。
「時間が心配だけれど、
とにかく鳥居先生の授業時間10分の間は絶対CMは入れない」
ありがとうございます。
正直言って、みなさん、私のことを見て不安だったと思う。
シロウトに10分間も割いている。
他の番組ではありえないという。
「とくダネ!」でも10分生授業は初めてらしい。
また私には実績もない。
しかし私を信じて任せていただいた制作の方々のためにも
最高のパフォーマンスで応えなければならなかった。
それが私なりの流儀だ。
スタジオで最終リハーサル。
カメラがたくさん回り、スタート。
地に足が着いている。
風景がよく見えた。
リハーサルはバシバシ決まった。
スタジオでも笑いがもれた。
これで大丈夫だろう。
一応、OK。
しかし、
「もう少し削れないか?」
ディレクターの佐塚さんは、もう無理だと言ってくれた。
授業の構成が壊れてしまう。
しかしそこで1つ提案した。
「大卒フリーターのクイズはやめて
いきなりグラフを出して説明すれば30秒くらい縮まるかも…」
で、そうした。
これ以上は無理だろう。
やるべきことはすべてやった。
あとは本番を待つのみだ。
6.「盛り上がらないかも…」
ディレクターの佐塚さんと談笑師匠が
MCの小倉さんたちとのミーティングへ。
私はスタジオでさらにカメラワークなど打ち合わせていた。
「ミラーリングはピーコさんへ振ります。
ペーシングは小倉さんに…」
画面を2分割にして
左に私、右にコメンテーターというようにすることになった。
スタジオでの打ち合わせが終わり、情報制作センターへ戻ると
佐塚さんと談笑師匠が浮かない顔をしている。
どうしたんですか?
「…ひょっとしたら盛り上がらないかもしれない…」
当初は、コメンテーターの方々にかき回されるかも
と懸念していたのだが…
「本当に50分くらいの授業で子どもが変わるのか?」
「シロウトさんの生授業で大丈夫?」
「ニートはともかく、フリーターでもいいんじゃない?」
ちょっと、熱が低そうだという。
でも私は言った。
「大丈夫ですよ。いつもそういう環境で講演しているんです。
慣れています」
実際そうだった。
私は見た目が若く見える。
テーマが「フリーター・ニート対策」という重いものなので
もっと年配の講師が来ると思っているらしい。
「え?ああ、今日の講師の先生ですね?」
みたいなことは日常茶飯事だ。
だから私は、むしろそのギャップを楽しんできた。
みなさん、私の話を聞くとびっくりするようだ。
そして特に、映画のセリフを使ったこの「メンターの授業」には
私は絶対の自信を持っていた。
どの会場でも成功していたからだ。
ということで控え室へ。
時計は8:00になろうとしていた。
7.そして、本番へ
化粧室でメイクをしてもらった。
「顔色が悪いので健康的にお願いします」
と頼んだ。
そうして控え室に。
「鳥居徹也様」とある。
隣の部屋は「GAKUT様」とあった。
今いるのかなあ?
部屋にはテレビがある。
オンエア中の「とくダネ!」を見る。
あと1時間後にはあそこで私が授業をしているのだ。
そう思うといてもたってもいられない。
時間ギリギリまでリハーサルを行うことにした。
大きな鏡に向ってセリフを繰り返した。
耳からアナウンス原稿を繰り返したおかげで
よどみなくセリフが出る。
息をするくらい自然だ。
普通にやれば成功は間違いない。
でも、ひょっとすると…
そこで念のため、例の呪文を。
鏡を見ながら数分間行った。
ちょっと恥ずかしいが、手の内を明かすと…
お前はそれにふさわしい
お前はそれに値する
というセリフを延々と繰り返す。
こうして自分の価値を高めるのだ。
全国の飛び込み授業をこうしてこなしてきた。
私は本番に強いタイプなので
いざ、という時には上がらない。
ただその前日がいけない。
緊張する。
そこでどうにかならないか、と模索するうちに
上に書いた呪文にたどり着いたというわけだ。
人の期待に応えるのがプロフェッショナルの条件であるならば
私もそのひとりといえる。
普通プロは手の内は明かさない。
しかし私には、
努力の意味
失敗の効用
を説き続けるという役割があるのでかっこつける必要はない。
本番でうまくいかせるには
それなりのことをするのだ。
酒はやめて
夜、努力しているのだ。
もっとも、プロフェッショナルと呼ばれる人がこの文章を読んだら
「何を当たり前のことを」
と笑われてしまうだろうが。
そうこうしているうちに、ドアがノックされた。
時計は9:00を回っていた。
私の時間は9:25からの15分間だ。
スタジオの外のモニターの前には
プレゼンテーターの方々がいた。
竜介さん死去のニュースをやっていた。
アダルトビデオに出演し…
みたいなコメントに、
「そんな死者に鞭打つみたいな…」
とか、いろいろ話している。
現地との中継がつながらなかったりして、
「あ〜あ!」
とか言っている。
だんだんと本番が近づく。
チーフディレクターのM女史が私のそばでサポートしてくれた。
私の緊張をほぐそうと気を遣っていただいた。
ありがとうございます。
で、来た。
舞台のそでに立つ。
プレゼンテーターの立川談笑師匠が話し始めた。
私は促されて、そのすぐ横に立った。
私の紹介VTRが流れる。
全部で3分間ある。
その間、私はMCの小倉さんはじめ、佐々木アナウンサー、
コメンテーターのピーコさん、諸星教授、前田さんたちに
アイコンタクトを試みる。
みなさん、チラリと一瞥。
緊張の一瞬だ。
でも私は自然と笑みが出た。
よし、大丈夫だ!
で、本当にそのときが来た。
スタジオの風景がよく見えた。
ひとりひとりにアイ・コンタクトしながら授業ができた。
でも最初はみなさん、固かった。
私はちょっと戸惑いを感じていた。
厚生労働省のスライドを説明すれば
あとは大丈夫だった。
映画の話さえ始まればこちらのペースになる。
いつも講演でそうなのだが、
私が大上段に構えて、
「メンターとは!」
と始めればきっと違和感がある。
私なんかよりもずっとべテランの先生方を相手にしゃべっているのだ。
だから私にはたとえ話が必要なのだ。
誰もが納得できるたとえ話が。
マトリックス
ライオンキング
スター・ウォーズ
いろいろな映画を見て題材を探した末に
この3つにたどり着いた。
この授業には自信があった。
で、今回も成功した。
さらにそこに、心理学のテクニックも加えた。
盛りだくさんだ。
10分間で33枚のスライドを使った。
これは普段はありえないことだ。
私はだいたい50分の授業に対し、スライド93枚。
1分につき、1.86枚というテンポだ。
それが今回は、
1分につき、3.3枚というハイペース。
しかもコメンテーターとの絡み込みで、だ。
できれば、コメンテーターの方々のつぶやきにも反応したいと思っていたのだ。
時間ばかり気にして
自分勝手に突っ走る授業だけはやりたくなかった。
残念ながら、最後のフリートーク3分間は削られてしまったが
それは仕様がない。
鳩山幹事長の生出演のところで、5分押していたのだ。
私としては10分の授業がほぼ完璧にこなせたことで満足していた。
私のパートを終えて、ステージのそでに戻った。
制作スタッフの方々の感想をお聞きした。
喜んでもらえるだろう、と思ったが
みなさん難しい顔をしている。
どうも、最後のフリートークが尻切れになったことを気にされていた。
私的には満足ですよ、と伝えたが
番組的には必要なパーツなのだろう。
「なぜ、このキャラバンを始めたのか?」
「生徒の反応はどうなのか?」
「そもそも『鳥居徹也』とは何者なのか?」
そうした項目が飛んでしまった。
そうですか、じゃあまた呼んでください、ということで次への期待がかかる。
物事すべて「余韻」が大事だ。
やがて番組がすべて終わった。
私は1つお願い事をしてみた。
「あのう、私、ミーハーなんです。みなさんと記念撮影がしたいのですが…」
そうして撮ったのがこちらである。
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みなさん、ありがとうございます。
控え室に戻り、手をつけていなかったサンドイッチを少し食べた。
もちろん食事のことなど忘れていた。
やはり神経は張り詰めていたのだ。
さあ、終わった。
学校に帰ろう。
タクシーでフジテレビを出た。
昨日とは打って変わってすばらしい天気だった。
初夏のような日差しだった。
MP3プレーヤーでお気に入りの曲をかけた。
この瞬間のために私は仕事をするのだ。
何かを成し遂げたこの瞬間のために。
追伸:視聴率は?
本日(4/8)、視聴率についてディレクターの佐塚さんに聞いた。
視聴率は1分ごとに出る。
CMでいったん切れた数字が
生授業開始とともに上がった。
おおむね8%くらい。
最高で9%になった。
まあ成功とのこと。
よかった。
数字も取れた。
また機会があったら呼んでください、と頼んだ。
次は「心の血液型」をやりますよ、と。
スタジオ生授業は、ものすごい負荷がかかるので
授業の腕がグンと上がる。
普段から負荷をかけていると
通常の授業・講演がものすごく楽になる。
私のホームグラウンドは教室や体育館なので
アウェイのスタジオを経験すると強くなれる。
これをよい経験としてこれからも頑張ろう!
追伸2:
今後もっともっと授業がうまくできるように努めようと思った。
それには「声」をいかによくするか、だ。
プレゼンは「声」で決まる。
過日、向山洋一先生と話した。
やはり「声」ですよね、と。
向山先生は学生運動をやられていたときに
全く見向きもしない聴衆相手に鍛えられた、と言われた。
なるほど。
では私は、私の講演を無視しておしゃべりをする高校生に鍛えられたのだな、と思った。
「声」は一朝一夕にはよくはならない。
常日頃より、意識して鍛えなければならない。
「声」のことを「声音」(こわね)という。
「声」は「音」なのだ。
「音」をよくしなければならない。
よい「音」とは、「余韻」であるという。
これは人相術の要諦だ。
顔の中で、つねに変化する部位が2ヶ所ある。
それで運勢は変えられるという。
それは目と口。
すなわち、「目の輝き」と「声」なのだ。
これは人相術の奥義奥伝である。
学生時代に、高いお金をつぎ込んで勉強したものだ。
「声」はとっても重要なのだ。
「声」の質次第で、運命が変わる。
豊臣秀吉の顔はネズミのようで、貧相の見本のような顔だ。
しかし太閤は日本一の大金持ちになった。
その声ゆえだという。
天下に号令する声とは、秀吉のその声だという。
大きく、太い声。
一方の、今太閤の田中角栄元首相は
あの枯れた声ゆえに…、と教科書的には解説できる。
それくらい「声」は重要だ。
プレゼンを生業をしている人がこのページを見たならば
ぜひ、1日10回のうがいを習慣化していただきたいものだ。
追伸3:
私はプレゼンにリモートマウスを使う。
コクヨ製のUSBマウスだ。
(プレゼンテーション用USBマウス EAM-ULW1)
生授業終了後、
プレゼンテーターの方々や小倉さんなんかもこれに興味を持っていた。
「絶対俺もこれ使う!」
という声も。
操作は簡単だ。
値段は、価格ドットコムで8,000円くらい。
私のように、体育館での仕事の多い人間には欠かせない。
体育館でも机間巡視ができる。
一番後ろの席の生徒と話しながら、
「さあ、みなさん。答えがスクリーンに出ます。正解はこれです!」
と講演を進められる。
おすすめである。
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