平成18年度 6/20キャラバン報告 中央区立阪本小学校


H18.6/20(火) 

阪本小学校の歴史は明治4年に始まる。
とてつもない歴史だ。
OBに谷崎潤一郎がいるとだけ記しておこう。

その阪本小学校で公開授業をする機会を得た。
ありがとうございます。
午後1時半開始だったので、
私はお昼過ぎにぶらぶらと日本橋兜町を歩いていた。
そう、阪本小学校は日本経済のまさにど真ん中にあるのだ!
私はその6年生約30名に授業することになっていた。

東京メトロ「茅場町」駅から歩く。
途中、坂本町公園に立ち寄ると
多くのビジネスマン・OLがランチをしていた。
そしてその間を縫うように
水着姿の子どもたちの行列が…
そう、この日は阪本小学校のプール開きだった。
小学校に隣接したこの公園のプールを使用いていたのだった。

校門から入り、向山行雄校長先生にご挨拶。
さまざまな話をしているうちにメディアの方々が訪問。
東京新聞の記者の方はかなり突っ込んだ話を校長先生としていた。

それからこの日はTBSのイブニング・ファイブの取材も入った。
担当ディレクターのKさんとは、
6/3の早稲田大学での講演会で知り合った。
その際いろいろなお話をして意気投合した。
ぜひ小学校の取材を、と依頼し実現した。
これ、実はまだ放送されていない。
そのうち全国ネットで流れるはずだ。
小学校の入り口までの狭い道を
お昼休みのサラリーマンをよけながらカメラマンと音声さんと歩いた。
あのシーンは生かされるのだろうか?



授業が始まった。
なんとこの小学校には冷房完備だった。
エクセレント!
昔の日本の夏はも少し涼しかったはずだ。
夕涼みという言葉があるように
夏の日がかげると涼しい風が吹いたはずだ。
ヒートアイランドの東京では望むべくもない。
だから教育現場にも、もっと空調が整備されてもいいと思う。

小学6年生の目はキラキラしていた。
授業準備として事前に教室へ行き
ついでに子どもたちとコミュニケーションをとっておいた。
これは極めて重要である。
いきなり授業スタートという手もあるが
あらかじめ何名かの子と触れ合う。
特にやんちゃそうな子どもに声をかけておく。
そんなことを心がけている。
私にはたったの45分しかない。



みんな楽しそうに集中してくれたので
私も楽しく授業ができた。



ただ小学生にとっては
フリーターと正社員の生涯賃金の格差よりも
フリーターがいなくなるとコンビニが夜の8時に閉まるかもしれない、
という話の方が切実なようだ。

実はこの公開授業に先駆けて
私はリハーサルをしていた。
なにしろ小学生に授業するのは初めてだった。
初めての授業にいきなりテレビカメラはまずいだろうと考え、
5/24と6/12に川崎市立小倉小学校で授業をさせていただいた。
小学校5年生4クラス(4回転)と6年生4クラス(4回転)。
これだけやれば、データは十分集まる。

私の授業は50分構成だ。
しかし実態は55分くらい。
中学や高校ではいつも時間ギリギリで行っていた。
それが小学校は45分。
さらに5分削る必要がある。
いろいろと迷ったが
3つくらいの授業パターンを用意して
小倉小学校で試した。
一番最初に授業をした小学5年生の授業は失敗だったと思う。
試行錯誤のあまり「子ども扱い」してしまった。
内容のみならず、口調もいけなかった。
授業にキレがなくなった。
だから次の時間から私は
高校生に話しかけるように声を発した。
それでちょうどよかった。

ただ1つ失敗した。
フリーターの現実を知ってもらおうという1つの問いかけ。

 「もし日本からフリーターがすべていなくなったら、コンビには8時で閉まるだろう」
 「…100円ハンバーガーは500円になるかもしれないし、牛丼は…」


私もまた大げさに話すので
子どもたちの表情が見る見る変わっていった。

 「そりゃあたまらん!」

そんな感じだった。
で、終了後の感想文を読んだら

 「私は将来フリーターになってコンビニを…」

みたいな声が…
確かに労働問題は複雑である。
私は、将来の進路選択を考えている子どもたちを目の前にしているので
労働環境の話にはあまり触れない。
そうした姿勢に批判もある。
しかしそれは私の役割ではない。
子どもの仕事は勉強だ。
努力して、自分の内なる可能性を開花させて欲しいと願っている。

中学生や高校生からは聞いたことのなかった上記感想文に私は頭を抱えた。
だから小学生バージョンはそうしたところを修正している。

  

なにかをうまくやり遂げるためには
必ず失敗が必要である。
仮に最初から成功する場合があるとする。
しかし注意しなければならない。
そこには落とし穴がある。
成功は興奮を伴う。
冷静な「学び」が得られないかもしれない。
「慢心」という罠もある。
失敗すると、工夫する。
違う方向性を模索する。
するともっとよい方法が見えてきたりする。
小さくテストして失敗を小さく経験しておくことは重要だ。



やはりマイクを使わない授業はいい。
平成18年度はほとんど講演形式だ。
その訳は疲れたからだ。

平成17年度は
たとえば一泊二日で中学2年生7クラスそれぞれを授業したりしていた。
これはなかなか疲れる。
それで今年度は全校生あるいは学年全体を対象に
1回の講演をお願いしている。
小学校を除いて。

マイクを使わないので両手が自由になる。
演者にとって「手」は武器である。
手はさまざまな表情を作り出せる。
指一本も重要なツールだ。
ハリソン・フォードを見よ!
彼は人差し指1本で演技する役者だ!

役者ついでに書くと
私はアル・パチーノの演技を徹底的に研究している。
アル・パチーノといったら、なんといっても演説シーンだ。
「火を噴くような」という表現はまさにアル・パチーノに当てはまる。
5分間の演説シーンを音声ファイルに編集し、
長い移動時間の間、エンドレスで聞き続ける。
これが私のスピーチ訓練法だ。
それはともかく…



これは私の特技かもしれないが
目の前にいる聴衆の年齢に合わせて
瞬時に対応を切り替えることができる。
11歳から大人まで。
スペクトラムは広い。

小学生は楽しい。
目がキラキラしている。
好奇心の塊だ。
いったいいつから、この好奇心はしぼんでいくのか。

ところで順調に進んだ授業ではあるが
子どもたちのコンディション的にはつらいものがあった。
今年初めてのプール。
直後の給食。
空調の聞いた教室。
そして私の授業、である。
約1名、睡魔との闘いに明け暮れた子どもがいた。



担任の先生から事前に聞いていた。
この子はちょっと寝てしまうかもしれません、と。
フリータークイズには熱心に参加していたが
だんだんまぶたが重くなってきたようだ。
目の前ということもあり、彼は懸命に耐えていた。
大きな船をこぎながら
最後の最後までよく耐えた。
しかし…



最後の瞬間、彼は別の世界へ…
しあわせそうな寝顔だった。

 授業後に 「キミ、こんな格好でがんばってたな」 と話す

授業終了後呼び止められた。
制服姿がかわいらしい。



そしてサイン会が始まった。
めいめい、お気に入りのマンガやメモ帳、紙など持ってきた。

 

 

名前書くくらいで喜んでくれるなら、とうことで
全クラスの子どもたちに書いた。



その後でインタビューを受けた。
TBSのKさんは私と同じ大学出身ということもあり
大変打ち解けていた。
この後、TBSの車に乗せていただき船橋情報ビジネス専門学校へ向った。
学校の学生ホールにて私の仕事風景を撮影した。
学生との懇談シーンなども。
いつ放映されるか私も楽しみだ。


追伸:
キャラバンの荷物が重いので、最近はビデオセットは持ち運ばない。
しかし時々、小さなホームビデオは持参する。
そのビデオの中からキャプチャーした写真をもとに
今回のような授業記録をときどき書きたいと思います。



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