根本幼児教育直伝

TOSS体育/幼児/体育/根本幼児教育直伝/理論/今、なぜシングルエイジ体育か
根本正雄(TOSS体育授業研究会代表)

今、なぜシングルエイジ体育か

1.シングルエイジ体育の必要性

 シングルエイジ体育がなぜ必要なのかを考えさせられたのは、あるオリンピック選手の次の言葉であった。
 「体操が上手になるには、小さい時から始めないと上達しません。特に空中での回転感覚は、10歳以下で身につけないと駄目です」
 体操競技には、空中で回転する技がたくさん見られる。それらの基礎は10歳以下で習得しないと大成しないのだという。10歳を過ぎると身につけるのが難しいのである。
 この言葉は私に強い印象を与えた。なぜなら、体育でも同じことを考えていたからである。
 体操競技と体育の運動とは異なるが、運動感覚は10歳を過ぎては身に付けにくいというのが私の実感である。
 5年生に鉄棒の後方支持回転を指導していた。逆上がりが10回連続して出来れば、後方支持回転が出来るだろうという仮説を立てた。
 逆上がりが10回連続できれば、後方支持回転に必要な逆さ感覚、腕支持感覚、回転感覚などの基礎技能が出来ると考えたからである。
 ところが逆上がりが連続10回出来ても、後方支持回転の出来ない子供が5人ほどいた。逆上がりは出来るのに、どうしても鉄棒から体が離れてしまい、回転出来ないのである。
 どうして出来ないのか、原因が分からないでいた。マット運動の側方倒立回転を行った時に、その原因が解明された。
 逆上がりが連続10回出来ても、後方支持回転が出来ない子供に共通していたのは、腰が上がらず目線が上を向いてしまうことであった。
 つまり、逆さ感覚が十分に育っていなかったのである。側方倒立回転が出来るためには、回転する時に手と手の間を見ることが大切である。そうすると、腰の伸びた大きな側方倒立回転になる。
 逆さ感覚の育っていない子供は、恐怖心が強く手と手の間を見られないために、腰が伸びないのである。
 そのことから、小さい時に基礎感覚を養成しておくことが大切であることを痛感していたのである。
 幼児期から小学校低学年の教育について研究がなされることは、たいへん意義のあることである。
 子供の心が豊かに伸び伸びと育つためには、健康であることが大切である。美しいものに感動し、やさしい人間になるためには、幼児期における教育が重要だと言われている。
 心の教育は、大人になっては遅い。人間の健康も同じである。
 逆上がりが出来るためには、逆さになることが平気だという感覚を育てておかなければならない。
 この感覚が一番伸びるのが、幼児期から小学校低学年の時期である。逆上がりを教える前に、遊びを通して逆さ感覚、回転感覚、平衡感覚、腕支持感覚などを身につけておく。
 幼児期から小学校低学年で運動技能を身につけた子供は、社会性が育つ。一緒に遊んだり運動したりする中で、友達との関わり合いを学んでいくのである。
 幼児期から小学校低学年にかけて、運動能力を開発していくことが、健康な体と心を育てていく上で必要なのである。
 どんな運動をどの時期にさせていったら子供の心と体が育つのかは、まだ十分に明らかにされていない。
 シングルエイジ体育研究会では、ぜひこの研究を深め、運動の好きな子供を育てていきたい。そして、生涯にわたって運動に親しみ、健康作りのできる人間にしたいと願っている。
 また、幼児期から小学校低学年の関連についても検討していきたい。
 今までは、幼児期での運動経験が小学校低学年に十分生かされてこなかった。幼稚園、保育園での運動遊びのもとに、小学校体育がなされて来なかった。
 小学校低学年の体育に結びつく幼児体育のあり方を究明していくことが、これからの課題である。
 健康な体を作るために、幼児期と小学校低学年とを関連させて考えていくことが求められるのである。

2.幼児期に育てておきたい感覚運動

 運動には感覚運動と身体運動とがある。
 身体運動には移動運動と操作運動がある。移動運動には、歩、走、跳くぐる、回る、ぶらさがる、よじのぼるなどの動きがある。
 操作運動には、おす、ひく、なげる、とる、ける、とめる、うつ、つくなどがある。輪、棒、ボールなどの用具を使用して行う。
 感覚運動には、位置感覚、視覚調整感覚、聴覚調整感覚がある。特に幼児期には感覚運動を重視して育てていって欲しい。
 なぜなら、幼児期に一番伸びるのは感覚運動だからである。感覚運動について以下に述べる。
 位置感覚としては、逆さ感覚、高さ感覚、回転感覚、振りの感覚、平衡感覚を育てる内容がある。

 ○ 逆さ感覚  ブリッジ、足打ち、倒立
 ○ 高さ感覚  ジャングルジム、跳び箱、鉄棒、うんてい
 ○ 回転感覚  マット、鉄棒
 ○ 振りの感覚 こうもり振り、足かけ振り、懸垂振り
 ○ 平衡感覚  平均台歩き、片足ずもう

 視覚調整感覚には、目と手、目と足、目と手足の協応動作を高める運動である。ボールつき、ボールころがし、ボールなげ、輪ころがし、輪投げ、ボールけり、輪跳び(床に置いて)、なわ跳び、輪跳び(手に持って)などの動きがある。
 聴覚調整感覚には、耳と手、耳と足、耳と手足の協応動作を高める運動である。
 曲に合わせてボールつき、合図があったら立つ、座る、走る、太鼓に合わせてスキップ、ギャロップ、曲に合わせてなわ跳び、輪跳びなどの動きがある。
 以上のような感覚運動を幼児期に育てておくと 身体運動も伸びていく。


 【感覚運動】

 A.位置感覚
基礎感覚 活 動 内 容 教  材
逆 さ
高 さ
回 転
振 り
バランス
ブリッジ、足打ち、倒立
ジャングルジム、跳び箱、鉄棒
マット、鉄棒
こうもり振り、足かけ振り、懸垂振り
平均台歩き、片足ずもう
足打ち跳び
ターザンおり
だるま回り
こうもりごっこ
かに歩き

 B.視覚調整感覚

基礎感覚 活 動 内 容 教  材
目と手

目と足
目と手足
ボールつき、ボールころがし・投げ輪ころがし、輪投げ

ボールけり、輪跳び(床に置いて)
なわ跳び、輪跳び(手に持って)
まりつき
わなげ
ボールけり
フープなわ跳び

 C.聴覚調整感覚

基礎感覚 活 動 内 容 教  材
耳と手
耳と足
耳と手足
曲に合わせてボールつき
合図があったら立つ、座る、走る、太鼓に合わせてスキップ、ギャロップ
曲に合わせてなわ跳び、輪跳び
リズムつき
スキップ
ギャロップ
リズムなわ跳び

 これからの研究は、以上の感覚運動を何歳児にどのように指導していくかである。
 運動の適時性から見て、いつ頃から行っていくのかが分かれば指導の効率化がはかれる。
 一番伸びる時に、その運動を与えていけば良いのである。ぜひ多くの方の力をおかりして、シングルエイジ体育を確立していきたいと考えている。


戻る

Copyright (C) 2003 TOSS Physical Education Study Group Representation Nemoto Masao All Rights Reserved.
TOSS(登録商標第4324345号),インターネットランド(登録商標4468327号)
このサイト及びすべての登録コンテンツは著作権フリーではありません