根本直伝総合的な学習の時間

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根本正雄(TOSS体育授業研究会代表)


. 子どもの意欲を高める教材の開発


@ 総合的学習の価値

 楽しい授業を作るためには、子どもの意欲を高めることが第一条件である。そのためには意欲の高まる教材の開発が必要である。
 本校には総合的学習の時間がある。教科、領域以外の内容で子どもの興味、関心に基づいた活動をさせるものである。
 千葉県総合教育センターの椎名仁氏は、本校の公開研究会で総合的学習について次のような指導をしてくださった。

一、総合的学習のねらい
 1 知識、技能、関心、態度、意欲などの要素的学力を統合したその子なりの人間力を形成することができる。また、個性的な生き方を培うことができる。
 2 教科学習で身につけた物の見方、考え方を統合的、関連的、包括的に学ぶことができる。
 3 科学的な生活化、合理化をして豊かに生きる力ができるための基礎的な生活習慣、道徳的な価値判断ができる。
 4 身の回りの処理、実践的な問題解決力が育つ。

二、総合的学習のよさ
 1 どんな子どもでも能力に応じて喜んで参加できる。おもしろく、楽しく、学ぶありがたさが感じられる。学習意欲を高めることができ、自己操作、セルフコントロールができるようになる。自己教育力につながる。
 2 学び合い、教え合い、助け合いの中で、子どもどうしのねらいも達成させながら学習できる。
 3 生涯学習につながる科学的な学び方、学習能力を習慣、意志、意欲と結びつけてでき、学び方につながる。
 4 それぞれの個性の伸長と想像力につながる。一人一人の持つよさ、特性を十分に発揮して、思う存分活動して考えるのでその子の持つよさが伸びる。

三、総合的学習の方向
 1 体験的学習を多くとり入れていく。五感すべてを使って活動していく。その中で感動体験(成功・失敗)をさせていく。
 2 計画・企画段階を重視する。

 総合的学習は、教科では身につけられない、その子どもなりの人間的な力を形成させ、個性的な生き方を培うことができる。

A カルタ作り

 五年生の総合的学習でカルタ作りを行った。
 子どもの知識欲は盛んである。何にでも興味を持ち、自分から働きかけていく。しかし、その知識は断片的であり、一つのことを継続して調べたり根気よく深めていったりする態度は乏しい。
 また、問題が起こると途中でやめてしまい、他の物へ興味が移ってしまうことが多い。そういう子どもたちに一つの活動を根気よく行い、継続していく力をつけさせるのにカルタ作りは適している。
 カルタは日常生活において誰もが一度は経験している。しかも作ったあとゲームをして楽しむことができる。
 カルタ作りの手順は次のようである。

 1.計画を立案する。………………3時間
 2.カルタの原案を作成する。……6時間
 3.カルタを作成する。……………8時間
 4.ゲームを行う。…………………3時間

 根気よく、最後まで活動させるにはカルタ作りの手順、方法について見通しを持たせることが必要である。
 カルタには読み札と取り札があり、それぞれどんな役割を果たしているかを理解させる。自分たちの作るカルタにはどんな意味があるのかも考えさせる。
 読み札の文章は耳で聞いて理解できるものとし、四0〜五0枚の札を作成できるようにする。取り札にはどんな絵を描いていくかなどの手順、方法を明確にし、継続していく力を高めていく。
 計画を立てる前にどんなカルタを作りたいのかテーマを選択させた。テーマは子どもの関心のあるものにする。第一回の時間に、次のテーマとグループが決まった。

種類内容人数枚数
動物カルタ動物の名前をいれて動物の様子をかく。5人47枚
都道府県カルタ 取り札に地形をかき、読み札に県の言葉をかく。 4人 47枚
星座カルタ 空にうかぶ星座や神々をカルタにする。 5人 34枚
歴史カルタ 歴史のできごとなどをかく。 4人 50枚
附小カルタ 他の学校にないことで附小にあることをかく。 5人 50枚
漢字カルタ 漢字の読みかたを利用して作る。 3人 40枚
四季カルタ 季節にあった花をかいていく。 1人 48枚
ことわざカルタ 意味を調べ、そのことわざをかく。 4人 46枚
百人一首 本物の百人一首をまねして作る。 1人 100枚
植物カルタ 草花の特徴がわかるもの 4人 44枚
都道府県カルタ その県で有名なものなどをかく。 3人 47枚

 種類が決まった後、どんな内容にするかを話し合わせた。カルタの原案を作るのである。あるグループは図書館に行って調べる。図鑑や資料集で調べる。
 「どれにしようかな、この読み札がいいかな。」
 「こっちの方がいいよ。」
 子どもの特性に応じてグループ活動をしていく。絵の上手な子どもは取り札を描く。文章の得意な子どもは読み札を書いていく。それぞれのよさを認め合い、力を合わせて作っていくのである。
 作っていくうちに読み札のリズムが悪かったり、取り札の内容と一致しないものが出てきた。
 そこで、読み札の指導をすることにした。目で読むのではなく、耳で聞いて理解できる読み札を作れるようにするのである。

発問1  次の二つの読み札を見て、気がつくことは何ですか。

【板書】
 A えにかいたもちはじっさいに食べられない
 B あさがおはひるがおのいとこかな

大川 Bは短すぎる。
藤田 Bはひるがおを知らないとわからない。
武藤 Bはあけてあるからいい。
佐合 Bは区切りがあってリズムがある。Aは、ふつうの文章のように書いてある。

 そこで、Bの音を調べた。すると、五・五・五のリズムでできていた。それに対してAは、一定のリズムになっていないことを確かめた。
 AとBの違いをはっきりさせた上で、次の発問をした。

発問2  こういうのがあります。(板書)これはどちらに似ていますか。

【板書】
 魚やのおっさんが
 屁をこいた ブリッ!

 魚やのおっさんが
 驚いた ギョ!

 「B」という声があちこちで上がった。指で文字を数えている子どももいる。どこで切れるかを確かめ、黒板に数字を記入した。
 「こういうのもあります。」と言って、板書をした。

【板書】
 さよならさんかく またきてしかく しかくはとうふ とうふは白い 白いはうさぎ
 うさぎははねる はねるはのみ のみはあかい あかいはほおずき

発問3  これはBのようになっているでしょうか。

 なっていると答えたのは角坂さん一人である。あとはなっていないと言う。
 数えて調べていった。約七音で切れていることがわかった。「ちゃんと決まった文字でできている!」という感嘆の声が上がった。
 言葉遊びが覚えやすいのは、一定のリズムがあるためであると理解できた。
 次は本物のカルタがどうなっているかを調べた。「シンデレラカルタ」の読み札を板書して訊いた。

発問4  本物のカルタの読み札は、一定のリズムでできているでしょうか。

【板書】
 てをとって たのしくおどる しんでれら
 しろへゆく りっぱなすがたの しんでれら

 一定のリズムになっていることを確認して、次のように言った。
 「今度は『ぐりとぐらカルタ』で調べてみよう。どんな工夫がしてありますか。」と言って板書した。

【板書】
 わにどん わははと おおわらい
 やぎさん やっぱり やまがすき
 るすばん いるかと イルカがきいた

 「おもしろい。三つとも同じ言葉が入っている。」
 同じ言葉を使うことによって、リズムが出て口に出して言いやすいことがわかった。言葉遊びを通して、カルタの読み札の学習ができたのである。子どもの知っている言葉遊びを教材にすることによって、楽しい学習が展開できる。

指示  みんなのカルタの読み札も同じリズムになっているかを確かめましょう。
 なっていなかったら同じリズムに直してください。

 子どもは必死になって自分たちのカルタを調べた。なっていると歓声を上げて喜んだ。リズムを意識しないで作ったところは、修正していった。
 こうして読み札を完成させ、取り札は色をつけたりして完成させていった。約二0時間をかけ、どのグループのカルタも完成した。

 完成した後は、自分たちでカルタ遊びをしたり、交換したりして楽しんだ。正月の後、一年生を招待してカルタ大会も開いた。
 自分の作ったカルタで下級生が楽しむのを見て、どの子も満足そうであった。原案を作り、失敗を重ねながら作り上げていく中で、一つのことを継続していく力を養うことができたようである。

B 教育実習生の感想

 カルタ作りの最初からできるまでを見ていた二人の千葉大学の教育実習生は、次の様な感想を書いている。

   公開授業のカルタ作り   長井亜弓
 公開授業のカルタ作りでは、ずい分みんなのっていたと思います。私も大変楽しい気持ちになって、次はどんな例を出してくれるのか、なんとなくわくわくして黒板を見てしまいました。思わず指を折って数えたりもしてしまいました。
 音楽だけじゃなくて、言葉にもリズムがあった方がいいものですよね。楽しい気分になります。みんなもそうだと思います。だから楽しい気持ちで作った読み札には、意識していなくてもリズムができていたのでしょう。もう一度思い出してみてください。うまくできなくていやになっちゃった読み札にはきっとリズムはできていないはず。どうですか。
 それから、このカルタ作りをとおして、ずい分いろいろなことを覚えたのですね。感心しました。難しい植物、動物の名前や星にまつわる伝説、各都道府県の特徴や歴史上のでき事、ことわざや漢字の意味。四季や附小の特色。百人一首。みんなずばらしいことだと思います。ずっと大事にしていってほしいな。みんなのいい顔を見せてくれてどうもありがとう。

   カルタづくり   臼井 基之
 五年三組の子どもたちは恵まれている。「総合的学習」は興味深い学習である。それを「カルタづくり」について述べる。
 私はかつて地名恐怖症であった。国名、都道府県名、首都名、県庁所在地、山地、山脈名……等等。記憶が必要なものばかりである。ところがなかなか記憶できないのである。
 白地図に記入したり、トレーシングペーパーで写したり、漢字の練習のように地名を紙に書いたり、様々な方法をやった。しかし、いずれにしても楽しくない。しかも記憶ができないのである。
 「カルタづくり」を見た。「都道府県カルタ」があった。二グループあった。「取り札に地形を書き、読み札に県のことばを書く」グループと「その県で有名なものなどを書く」グループである。子どもたちがそれを製作する様子を見て、うらやましく思った。たいへんにうらやましかった。彼らから取り上げてしまいたいくらいであった。何故か。
 @ 製作自体が楽しそうである。
 A 完成後、カルタをやりながら楽しく都道府県を覚えることができる。
 「都道府県カルタ」に限らない。他のカルタにも@、Aは当てはまる。「楽しくて、ためになるのである。」
 この恵まれた機会を大切にしてほしい。

 二人の教育実習生は、総合的学習のよさをとらえている。椎名仁氏が述べられていた、「どんな子どもでも能力に応じて喜んで参加できる。おもしろく、楽しく、学ぶありがたさが感じられる。学習意欲を高めることができる。」という内容と同じである。
 「カルタ作り」の教材化は、そういう総合的学習のねらいを達成するのに適しているのである。


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