根本直伝教師修業

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根本正雄(TOSS体育授業研究会代表)

50代 教育界へのプレゼント、何を残せば教師生活に悔いはないか
. 授業のコツ

 よい授業を行うためには、いくつかの原則がある。原則を知っていて授業を行うのと、知らないとでは大きな違いが生まれる。体育科の基本的な原則について述べる。
 ここで述べた原則は他の教科についても応用できる。他の教科・領域でどんな場面であてはまるのかを実践の中から見つけてほしい。50代になった時、何十、何百かの授業のコツが残せたら後輩の役に立つであろう。

1.細分化の原則

 動きを良くしていくための練習方法として、細分化の原則がある。

 細分化の原則: 目標までのステップを小さくして、段階的に指導していく。

 水に浮けない子供に、いきなりクロールを教えても無理である。水慣れ→浮く→呼吸→泳法のステップを踏んでいく必要がある。

 @ ケン玉の級・段位認定表

 一つの動きを上達させるには、どの世界でも同じである。日本ケン玉協会から出されている「級・認定表」がある。
 級位と段位に分かれている。級は、十級から一級までに細分化されている。それぞれの級ごとに種目が示され、回数が決められている。
 新しい級に進むと、新しい種目は一回出来ればよい。前に出てきた種目は、二回出来ればよい。このように、一級までのステップが細かでのステップが細かくなっているので、どの子供も意欲を持って取り組める。

 A うさぎ跳びの段階指導

 器械運動の基礎感覚作りを行うのに、うさぎ跳びはよい運動である。逆さ感覚、腕支持感覚の両方の感覚作りが出来る。これが育っていないと、跳び箱運動、マット運動、鉄棒運動は難しい。
 出来ない子供に、いきなりうさぎ跳びをさせると、手で体を支えることが出来ずに手足を同時に着いてしまう。

 1.最初から両手を着いて足打ち跳び1回できる。
 2.最初から両手を着いて足打ち跳び2回できる。
 3.両手を上にあげた姿勢から足打ち跳びが1回できる。
 4.両手を上にあげた姿勢から足打ち跳びが2回できる。
 5.その場で、足−手−足の順序で、うさぎ跳びができる。
 6.20cmの間隔を足−手−足の順序で、うさぎ跳びができる。

 うさぎ跳びを練習する前に、足打ち跳びを出来るようにしておくことがポイントである。足打ち跳びの移動した動きが、うさぎ跳びだからである。このように、動きを細分化して指導していくと効果がある。

2.比較の原則

 良い動きを発見させる方法として、比較の原則がある。

 比較の原則: 二つの動きを比較して、動きの違いから原理を発見していく。

 向山洋一氏の大学の講義を受けたことがある。教育課程の編成についての講義であったが、向山氏は必ず資料を使用した。
 資料も一つではなく、二つの資料を検討させた。二つの資料を比較させながら、原理を発見させていく授業であるこの方法は体育の動きの原理を発見させる時にも有効である。

 @ 障害走の指導

 6年生で障害走の指導をした時である。3歩のリズム走を理解させるために、2人の子供に跳んでもらうことにした。

発問  A君とB君に跳んでもらいますどこが違うか、見つけてください。

 跳ばせた後、発表させた。「A君は、同じ歩数で跳んでいます。B君は、歩数が違います。」
 A君だけ跳ばせても動きの原理は見えてこない。A君と異なる動きと比較することによって違いが分かる。障害走では、「同じリズムで走る」ことが大切であることを発見した後、次の発問をした。

発問  A君の跳び方で上手なのは、どこですか。

 どこかと聞くと子供も答えやすい。子供からは、「足が伸びている」「遠くから踏み切っている」「低く跳んでいる」などの意見が出た。
 どれも間違いではない。A君だけの動きでは分かりにくいので、私が跳んでみることにした。

指示  先生が跳んでみます。A君の跳び方と違うところを見つけてください。

 踏切の位置を近くして跳んだ。当然腰の位置は高くなり、スピードは落ちた。A君と私の動きを比較することによって子供も遠くから踏み切ることの大切さを認識していった。

 A 動きを知る

 良い動きを見ても視点が分からなければ見えてこない。「どこを見るか」が分かれば、自分で学ぶことができる。見る視点を見つけるには、「二つの動きを比較」すればよい。
 比較の仕方には、違いを見つけるのともう一つ別の方法がある。

発問  A君とB君の動きで、同じところはどこですか。

 同じ動きを見ていくことによって、共通のしている原理を発見することができる。子供に相違点と類似点を見つける指導をしておくと、自主的な学習ができる。
 相違点と類似点は、比較の原理を活用していけば発見できる。

 B 確認の原則

 動きを高めていく方法に、確認の原則がある。

 確認の原則: 動きのポイントができているかを確認していくと、動きがよくなる。

 動きを高めるには、一つ一つのポイントがきちんとできているかを常に確認していく。運動の手順、方法を教えてもきちんと確認していかないと動きの質は高まらない。

 @ なわとびの指導

 4年生でなわ跳びの指導をした。二重跳びのできない子供が何人かいた。いきなり二重跳びの練習をしても効果がない。二重跳びの練習の前に、一回旋一跳躍の練習をする。
 「これから、なわ跳びの練習をします。2人一組になって、一回旋一跳躍が30秒間で何回できるか数えていきます。」
 2人一組で練習している間に、一人一人の子供の跳び方を確認していった。二重跳びに入る前に、一回旋一跳躍がきちんとできているのかを確認する。
 一回旋一跳躍ができていないのに、二重跳びを指導しても成果は上がらない。

 A 確認するポイントをつかむ

 確認するといっても、どこを確認したらよいのか分からないとできない。

 一回旋一跳躍で確認するのは、手と足の動きである。

 なわとびが難しいのは、手と足の動きが逆になっているからである。足が上に上がっている時、手も上に上がる動きなら易しい。
 ところがなわ跳びは、足が上がっている時に手は下にこないと跳べない。跳べる子供は自然にできるが、跳べない子供はどうしても手の動きが遅れてしまうのである。
 なわとびのポイントは、手と足の協応がうまくできることである。練習をしている間に、手と足の協応ができているかを確認していく。
 特に手の動きが遅くなっていないかを確認する。できていない子供には、手の動きを速くする指導を個別に行っていく。
 縄の長すぎる子には、短くして跳ぶように指示する 脇のあいている子には、脇を締めて手首で回すように指導する。

 30秒間で70回以上跳べるようにしましょう。

 30秒間で70回以上跳べないと、二重跳びは難しい。それだけ手と足の動きが協応できないと跳べない。一回旋一跳躍が30秒間で70回以上できるようになったところで、二重跳びの練習にはいる。
 基本的な手と足の協応の動きができているので、二重跳びの上達もはやい。

 B 一人一人を確認する

 確認をする時に大事なのは、一人一人をみることである。全体を見たり、グループを見て指導している場合が多いが、それでは確認にならな。
 一時間で無理なら、二時間かけて半分ずつ見ていく。一人ずつ確認された時、子供は伸びていく。

4.単純化の原則

 動きを高めていく方法に、単純化の原則がある。

 単純化の原則: 指導過程、内容、練習方法を単純化していくと分かり易く、動きがよくなる

 1992年10月25日、山梨市立体育館で法則化体育上達講座が開かれた。講師は、山梨大学の植屋清見氏である。走り高跳びでベリーロールの指導であった。小学生でもベリーロールが可能であるという新しい問題提起をされた。
 90分の実技講座で、全員がベリーロールをマスターし、記録を高めることができた。指導過程が単純化され、誰でもすぐに理解することができた。指導過程が分かり易くなっていた。

 1.動きを見せる
 2.跳び方のポイントを示す
 3.やさしい場で練習する
 4.記録に挑戦する

 この繰り返しであったために、すぐに跳び方をマスターすることができた。

 @ ベリーロールの指導

 植屋氏はベリーロールの内容と指導方法を5つのステップにして示された。

 第一段階 背中後ろまわり(2人1組)
 第二段階 側転の要領でマットに手を着いて、脚を振り上げて、背中からマットに落ちる。
 第三段階 身体(長軸)がバ−並行になるように落下する。
 第四段階 短い助走で、低いバーを跳び越す。
 第五段階 踏切局面にロイター板を設置して、上に跳び跳ねる。空中で右肩を巻き込むようにする。

 単純化されていたのは、指導過程だけではない。指導内容と方法も整理され、単純化されていた。
 ほとんどの受講者は、初めての経験であったが、内容、方法が一つ一つ単純化されていたので、何をどうするのかていたので、何をどうするのかきを身に付けることができた。
 そこで使用されていた指導の原則は、単純化の原則であった。

 A 2メートルを跳ぶ

 女性の参加者もいたが、全員1メートル20センチメートル以上を跳ぶことができた。
 男性の最高は、2メートルまで跳んだ。ロイター板を使用したとはいえ、いきなり跳んで2メートルも跳べたのである。
 植屋氏の指導を見ていて、指導者にきちんとした内容と方法があれば、小学生でもベリーロールで跳べることが分かった。
 むしろ、正面跳びやはさみ跳びよりも高く跳べ、跳躍の楽しさが体験できると確信した。指導のポイントをつかみ、内容と方法を単純化していけば、90分でマスターできるのである。
 参加者は、「大変気持ち良く跳べた。」と満足していた。「気持ち良く跳ぶ経験をさせたい。」という植屋氏のねらいが達成された。


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