心の虹―181号(2000.2.8)

心 の 虹

勇気と指針を示してくれる“師”の大切さ
芝修一氏の言葉

 2月7日、浜松町の「アジュ−ル竹芝」で向山先生、師尾先生、小野功一氏、日本放送作家協会員の芝修一氏、ワシントンホテルの牧英明氏、稲葉尚氏、坂元幸男氏と懇談した。講座、セミナ−会場の打ち合わせである。
 小野氏の紹介で芝氏と初めてお会いした。お名前は向山先生からお聞きしていた。放送作家で「すごい人」であるとのことであった。
 そういう方にお会いできることを楽しみに会に出席した。芝氏は私の予想を越えて、素晴らしい方であった。聞くところによると、1200本程の脚本を書かれていると言う。
 代表的な作品には、「若者たち」「これが青春だ」「水戸黄門」「中学生日記」などがあり、NHKの仕事も多数されているとのことである。
 驚いたのは、初対面の私に対して「根本先生」と呼ばれたことである。確かに名刺はお渡ししたが、名前で呼ばれるとは思わなかった。
「根本先生、教師はどんなにつらいことがあっても、人生は素晴らしいと元気づけていかなければいけません」と話された。
「私はたくさんの脚本を書いてきましたが、その根底には全て、人生は生きるに価するということを述べてきました」と言って、生活ヒントマガジン『プロセデ』19号を手渡してくれた。
 芝修一氏は『プロセデ』の編集長である。巻頭提言で「勇気と指針を示してくれる“師”の大切さ」について書かれていた。
 読み始めると思わず引き込まれた。師の大切さを述べられている。芝氏の師は作家の森敦氏であるという。
 「一流芸術の根底を成す『励ます力』」という小見出しで森氏の言葉を紹介している。
 「芝君、小説というのは人間の苦悩やら惨状やらを書きながらも、読む人にたえず生きる力というか活力を与えるところがそなわっていなくては良い小説とは言えないのです」と言った。そして「君はドラマを書く時、根底におくものはなんです」と聞いた。 「そうですねえ、どんな悲しい話でもその根底には絶えず、それでもこの社会は人が生きてゆく価値のあるところだという考えを見る人に伝えたい気持ちはありますねえ。例えば“男というものは死ぬことはあっても絶対に負けないんだ”という台詞はいつか言わせてみたいと思っていますね」と、答えると、 「そうでしょう。良いドラマだの良い小説だのというのは人を一生懸命元気づけることがその根底となっているんですよ」

 私はこの言葉を読んで感銘した。即座に「良い教育だの良い教師だのというのは子供を一生懸命元気づけることがその根底となっているんですよ」と言い換えた。
 今までに、心に残っている教師が三人いる。一人は高校時代の1年の担任である。自信を失っていた私を何かにつけ引き立て、声をかけてくれた。体育祭では、「根本君は足が速いから100メ−トル走にどうですか」と推薦してくれた。
 二人目の教師は高校2年生の担任であった。進学校を決めるときに、自分ではとうてい無理だと思っていた大学を勧めてくれた。自分では無理だと思っていた大学を「根本君、受けてみないか」と言ってくれた時、「いい先生だな」と感じた。
 三人目は大学の教師である。試験の答案を返す時に「根本君の答案は、優ではなく秀です。素晴らしい答案でした」と誉めてくれた。その時に「自分もやれば出来る」と自信を持つことが出来た。
 それらの三人の先生をずっと尊敬してきた。しかし、なぜ三人の先生が心に残っているのかの理由がはっきりしなかった。芝氏の文章と森氏の言葉によって、はっきりと自覚することが出来た。
 三人の教師は私を元気づけ、励ましてくれていたのである。落ち込んでいた時に「人生は生きるに価する」と励ましてくれたのである。
 私は芝氏の言葉によって、教育の素晴らしさを認識することが出来た。教育の可能性を自覚できた。教師という職業について良かったなと初めて感謝することが出来た。
 私の学校に不登校の子供がいる。毎日5時前後に登校し、10分位話して下校する。担任と二人で会うのだが、最近自信を持って登校するようになってきた。表情が明るく、顔に張りが出てきたのである。
 私が言ってきたのは「おかあさん、必ず良くなりますから大丈夫です」という言葉である。子供には、「そのままでいいんだよ。君の登校したい時間に来ればいい。君は力があるから一人で勉強していける。家で勉強すればいい」と励まし続けてきた。
 私の指導の意味を今日、芝氏によって初めて理解することが出来た。教え方が上手であることも大切である。それ以上に、教師は『励ます力』が大切なのである。
 向山先生のところには全国から多くの教師が慕い、集まってくる。それは何故か。向山先生の言葉によって励まされ、元気づけられるからである。「教え方教室」には何度でも参加する教師がいる。
 向山先生の顔を見、言葉を聞くことによって疲れた体と心が癒されるのである。活力が得られるのである。勿論、指導法を学ぶことも出来る。
 「良い教育だの良い教師だのというのは子供を一生懸命元気づけることがその根底となっているんですよ」ということが、教育の根源である事を教えていただいた。
 今までぼんやりとしていたものがはっきりとした。腹の中に「スト−ン」と落ちた。これだというものを掴んだように感じられる。
 向山先生と出会って多くのことを学び、多くの恩恵を受けることが出来た。その中でも一番ありがたいのは、教師の世界では絶対に会えない方々と出会うことが出来たことである。梅原猛氏をはじめ、芝修一氏、小野功一氏などとお話をする機会が得られたことである。 向山洋一先生は私の師である。勇気と指針を示してくれる師である。師と出会えたことに感謝している。
 最近ようやく人生はつらいこと、いやなことがあっても素晴らしいなと思えるようになってきた。向山洋一先生のお陰である。
 私も教師として多くの子供たちに勇気と指針を与えていきたい。素晴らしい会に招いていだき感謝申し上げたい。 

【心の虹感想】
≪心の虹181号に現在の自分の思いが! (星島成壱先生)≫
 根本先生の心の虹を読むことは,現在の私の楽しみの一つになっております。更新されるごとに根本先生から,ご連絡がもらえるのも,本当に千葉MLの特権ですね。
 ちょっと前になってしまいましたが,根本先生が紹介されていた181号を拝見させていただきました。

 根本先生がかかれて言葉
 良い教育だの良い教師だのというのは子供を一生懸命元気づけることがその根底となっているんですよ
 そして、もう一つ教師は『励ます力』が大切なのである

 この2つに大変感銘しました!
 現在の私の思いがここにかかれていました。現在の大きな課題は「子どもたちをやる気にする!」これをテーマにしております。
 やる気をするにはどうしたらいいのか。基本はほめることだろう!じゃ、ほめるっていうのはどういうことなのか!
 そう考えたときに出てきたのが「はげましつづけること!」「認めたあげること」「自信をつけること」などが考えられました。
 そして,結論として子どもに寄り添って,毎日励まし続けよう!そう決めていたのです。
 そう決めてから,私自身のちょっとした態度が変わりました。そして子どもたちも少しずつ変化しているようです。ありがたいなあと思っています。
 教室は,牛歩のごとくゆっくりとしか進んでいませんが子どもたちの笑顔と一緒に楽しく過ごしていこう!
 そう思っています。
根本の返信
 心の虹181号お読みいただき有り難う御座います。

> そして,結論として子どもに寄り添って,毎日励まし続けよう!そう決めていたのです。
> そう決めてから,私自身のちょっとした態度が変わりました。そして子どもたちも少しずつ変化しているようです。ありがたいなあと思っています。

 励まし続ける人がいるときに、人間は自信と勇気を持つことができます。
 星島先生の励まし続ける指導によって、子供達も変わってきたとのこと、良かったです。
 そういう人がいるだけで学校に来るのが楽しくなります。


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