根本直伝講座U

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根本正雄(TOSS体育授業研究会代表)


. テクニカルポイントを押さえた体育指導

1.運動で一番大切なポイント

 一つの運動ができるためには、その運動に一番大切なポイントがある。
 開脚跳びであれば、「腕を支点とした体重移動」であり、支持後方回転であれば「肩回転加速」である。
 運動には、必ずできるためのポイントがあり、できるようになるための動きの原理・法則がある。それをテクニカルポイントと呼ぶことにする。
 開脚跳びであれば、「腕を支点とした体重移動」がテクニカルポイントになる。
 テクニカルポイントが分かれば、子供の動きの診断ができる。だから、運動のできない教師でも指導ができるのである。
 子供が跳べないときに、「腕を支点とした体重移動」ができているかを見ていけばいいわけである。
 原因が分かったら、「腕を支点とした体重移動」が体感できる指導をしていく。
 向山洋一氏は次の二つの方法で実践をし成果を上げている。

 A 跳び箱にまたいで、両手で体を支えて降りる。
 B 補助をして跳ばせる。

 テクニカルポイントを示しただけでは、跳べるようにならない。それに応じた指導方法を合わせて示すことが大切である。

2.テクニカルポイントを押さえた指導

 テクニカルポイントを押さえた指導をどのように行うのか開脚前転で見ていく。

つまずきを見つける

 テクニカルポイントを見つけるには、最初、子供がどんなところにつまずいているのかを分析する。
 開脚前転であれば、はじめ、なか、おわりの動きから見ていく。

はじめなかおわり
・スピードがない
・まわれない
・脚が開かない
・膝が曲がる
・手の着きが遅い
・立ち上がれない

 つまずきを見つけるには、上手な子供と上手でない子供の動きを比較していけばよい。
 必ず、どこか違っているはずである。一度に見つけようとしてもできない。だから、3つの部分に分けて見ていくのである。

テクニカルポイントを見つける

 つまずきが分析できたら、テクニカルポイントを見つける。
 テクニカルポイントは文献で調べていくか、文献にないときには、自分の実践から見つけていく。
 テクニカルポイントは、はじめ、なか、おわりに必ず一つはある。子供のつまずきと対応している。
 開脚前転の場合は、次のようである。

はじめなかおわり
回転加速の技術順次性の技術伝導の技術

 回転の初めにスピードがないと回れない回転のスピードを付けるのが「回転加速の技術」である。
 スピードのない子供に共通しているのは、腰角度が狭いことである。腰角度を大きくしないとスピードが出ないために、回りにくい。
 「はじめ」のテクニカルポイントは、回転加速の技術である。
 回ることができても脚が開かず立ち上がれない子供がいる。
 膝が曲がってしまい回転力がつかない。こういう子供の動きを見ていると、爪先が内側を向いている場合が多い。
 爪先が内側を向いているので膝がくっついてしまい、脚が開かないのである。
 「なか」では、順次性の技術がある。体がどんな順番でマットに着いていくのかである。
 後頭部、首、背中、腰の順番で回るのはできる。最後の動きが重要である。爪先から着くのか、かかとから着くのかが問題である。
 膝が伸びるためには、かかとから着かなければ難しい。できない子供ほど、爪先から着こうとしている。
 「なか」では順次性の技術がテクニカルポイントである。
 膝が伸び、脚が開いても手の着きが遅く立ち上がれない子供がいる。
 上体の起こしが遅いのである。筑波大学の高橋健夫氏は、「回転力によって得た力を上体に伝えて起きる」伝導の技術が必要であると述べている。
 着手を速くして、上体の起こしができる指導をしていけばよい。
 「おわり」では、伝導の技術がある。
 以上のようなテクニカルポイントを押さえておけば、できない子供がどこでつまずいているのかがすぐにわかる。
 診断するためには、観点を決めて見ていくことである。

方法を示す

 テクニカルポイントがわかったら、できるようになる具体的な指導方法を考える。
 原理・原則が分かっても、子供の動きを変える指導方法がなければ、意味がない。
 テクニカルポイントを押さえた指導方法を明らかにしていく。
 法則化体育では、具体的な指導方法として発問・指示、場作りを考えている。
 これらはすべてテクニカルポイントから出発している。
 テクニカルポイント、発問・指示、場作りの関係は、次ページの通りである。
 腰角度を大きくするための発問として、次の内容で行う。


発問  開脚前転をします。前転をするとき、A、Bどちらが開脚前転しやすいですか。

 始めから膝が曲がっていると回転の加速はつかない。蹴ったときに膝が伸びて、腰が高く上がる前転ができるようにする。
 そのために、手押し車からの前転、台からの前転などを練習させていく。できない子供には、教師が両足を持って高い位置から前転をさせていく。
 順次性の技術を身につけさせるには、次の発問をする。


発問  開脚前転で、脚がマットの外に出るように開きます。
  A、爪先から着いたほうがよいですか。
  B、かかとから着いたほうがよいですか。

 発問して考えを聞いたら、どちらがいいかを実際にやって確かめる。
 確かめられない子供には、上手な子供の動きを見せて判断させる。
 かかとから着いた方が、膝が伸びることを発見していく。
 かかとから着いた方がよいことは分かっても、どうしたら出来るようになるのかの手立てがないと子供は変わらない。そこで、次の指示をする。


指示  マットの外にかかとを着けなさい。

 この指示で子供の動きは変わる。具体的な目標が示されたので、動きのイメージがつかめたのである。
 問題になるのは、マットの幅である。最初から幅の広いマットでは無理である。
 できない子供には、90cmくらいのマットが適している。90cmができたら120cmのマットに挑戦させていく。
 マットの外にかかとを着けることによって脚は開き、膝は伸びていく。
 テクニカルポイントに応じた指導をすることによって、子供は出来るようになっていくのである。
 脚が開いても立ち上がれない子供がいる。上体の起こしが遅いのである。

発問  開脚前転で立ち上がるとき、手はいつ着いたらよいですか。
  ア かかとの着く前
  イ かかとの着いた後
  ウ かかとの着くのと同時

 出来ない子供は、かかとが着いた後に手を着いている。そのために、起き上がりが遅くなる。
 上手な子供ほど着手が速い。実際にやらせて確かめさせるとはっきりする。
 一番いいのは、かとかが着くのと同時に着手することである。速く手を着くことによって上体の起き上がりができていく。
 どうしたらいいか分かったら、出来る手立てを講じていく。
 マットを3枚、2枚、1枚にして前転していくのである。
 マットを3枚にすると、高さがあるので着手がしやすくなる。3枚で回れたら、2枚にする。

3.運動を見る眼を育てる

 テクニカルポイントがはっきりしていると指導も自信を持ってできる。
 教師が示範出来なくても、大事なポイントを押さえた動きの出来ている子供に示範させることができる。
 マットの外にかかとが出るようにすれば良いことが分かっていれば、個別指導している時にそういう子供を見つけていく。
 出来ない子供に、「A君のようにしてごらん」と言って示範してもらう。
 良い動きのモデルが出来るために、動き易くなるのである。
 テクニカルポイントは子供同士が教え合うときにも役に立つ。友達で教え合おうと言っても、どこをどのように見ていったらいいのか分からなければ出来ない。
 かかとと手を同時に着くことが大切であると分かっていれば、教え合うことが出来る。
 相互評価や自分評価も出来るようになる。運動を見る眼が磨かれていくのである。
 練習を繰り返すのではなく、ポイントをしっかり押さえた指導をしていくことが、楽しい体育の授業には必要なのである。


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