根本直伝講座

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根本正雄(TOSS体育授業研究会代表)


. 走り幅跳びの習熟過程 U


 走り幅跳びの基礎感覚、基礎技能については前回に述べた。今回は走り幅跳び、そのものの習熟過程について述べる。
 走り幅跳びの運動構造は次の4点である。

 1.助走
 2.踏み切り
 3.空中姿勢
 4.着地

 基礎感覚・基礎技能づくりを行なった後に、どのような指導を行なったらよいのであろうか。
 福島県の菊田明博氏から『THE陸上』という実践記録が送られてきた。小学校の陸上クラブでの実践記録がまとめられている。
 その中に、走り幅跳びの理論と実践が詳しく述べられていた。菊田氏の実践を参考にして、走り幅跳びの指導について考えた。
 ぜひ追試して効果を確かめてほしい。

1.助走

 助走で問題になるのは、どのくらいの助走距離が適切かである。
 以前私は、10メートル、15メートル、20メートル、25メートルの助走距離の中から自分に合う距離を見つけさせる実践を行なった。
 20メートル前後(6年生)が一番跳べるという結果になったが、菊田氏の実践では、歩数を決めて、助走距離を見つけさせる実践をしている。
 次に菊田氏が主張しているのは、助走のリズムである。

 ダッシュ・トン・1・2・3・4・タターン

 助走全体をダッシュ・トン・1・2・3・4・タターンのリズムで跳ぶのである。
 全員の子供にこのリズムで跳ばせるのは難しいが、指導者がイメージを持っていることは大切である。
 菊田氏は次のように説明している。

【ダッシュ】(スピードをつける)
 ◎ 「トン」のマークをめがけて、1歩1 歩「グングン」と加速していく。特に、出だしの3〜4歩は、いつも同じ歩幅でしっかりと地面をおす。

【トン】(リズムをかえるポイントマーク)
 ◎ 「もう少しで踏み切りだ」という心構 えを持つ。「トン」と同時に体を起こし、ももを高く上げる。

【1・2・3・4】(踏み切りの準備をする)
 ◎ 踏み切りやすい走り方に変える。

【タターン】(踏み切り)
 ◎ 最後の2歩は、ひとまとめにする。「タ」でリラクスして、「タン」で一気に力を爆発させる。

 このような内容をすぐには出来ないが、助走にはリズムが大切であることを認識させることが必要である。

3.踏み切り

 菊田氏は踏み切りに入る準備として次の2つをあげている。

 (1) 沈み込み(腰を下げる)
 (2) 後傾(体を後ろに傾ける)

 沈み込みを行なうためには、直接「腰を下げなさい」といっても子供には伝わらない。次の発問を行なう。

発問  踏み切りの時、膝は次のどれがよいですか。
  ア 伸ばす
  イ 曲げる

 沈み込みのポイントは膝にある。膝を伸ばすか、曲げるかによって決まる。
 跳躍につなげるためには、膝は曲げることが原則である。膝が伸びてしまったのでは、跳躍につながらない。
 踏み切りの一歩前に膝を曲げて、沈み込みをしていく。
 次は踏み切りである。踏み切りで大切なのは、「起こし回転」である。
 踏み切り足のつっぱりの反動で、体が起き上がろうとする力だと菊田氏は説明している。

発問  踏み切りの時、体形は次のどれがよいですか。
  ア 前傾
  イ 後傾


 子供の跳び方をみていると、ほとんどが前傾してまえかがみになっている。
 踏み切りでつっぱり、後傾しているのはまれである。なぜ後傾が大切なのかを菊田氏は、次の図で説明している。

≪体が前に突っ込んだり、後傾姿勢ができなていない場合≫


≪後傾姿勢ができている場合≫


 後傾姿勢によって、起き上がろうとする力が働くのである。この時大切なのは、踏み切りを踵から入っていくことである。
 踵から入ることによって、膝が伸び突っ張りができる。

4.空中姿勢

 踏み切った後の空中姿勢が重要である。走り幅跳びには次の3つの跳び方がある。

 (1) またぎ跳び
 (2) 反り跳び
 (3) はさみ跳び

 普通小学生の子供が跳んでいるのは、またぎ跳びである。またぎ跳びでも遠くに跳べるが、ここでははさみ跳びの段階指導について述べる。
 そり跳びは一見難しそうに思われるが、指導してみるとそんなに難しくない。
 私も跳び箱をつかったりロイター板を使ったりして指導したことがある。
 菊田氏は、『体育指導事典−陸上運動編−』の中で反り跳びの指導に付いて、6段階のステップを示している。
 実際に試してみたが大変効果のある指導法である。次に紹介する。

第1段階  跳び箱の上からジャンプして、空中で膝を抱え込む。その後、膝を伸ばしながら降りる。着地では膝を十分に曲げて、しりもちをつくようにしゃがむ。
第2段階  跳び箱の上からジャンプして、空中で膝を抱え込む。そして、その姿勢のままおしりから落ちる。
第3段階  跳び箱の上からジャンプして、空中で両脚を後ろにたたむ。その後、膝を曲げたまま両脚を前に出し、おしりから落ちる。
第4段階  跳び箱の上で振りあげ脚をあげた姿勢をとる。そこから片脚踏み切りで前に跳び出して、空中で両脚を後ろにたたむ。その後膝を曲げたまま両脚を前に出し、おしりから落ちる。
第5段階  ステージの上から踏み切り、空中で両脚を後にたたむ。その後、膝を曲げたまま両脚を前に投げ出し、おしりから落ちる。
第6段階  ロイター板と跳び箱を組み合わせる。そこをかけ上がるように踏み切り、空中で脚を後ろにたたむ。そのご、膝を曲げたまま両脚を前に投げ出し、おしりから落ちる。

4.習熟過程

走り幅跳び




着地
空中姿勢
踏み切り
踏み切り準備
助走
基礎技能


踏み切り板からの走り幅跳び
ロイター板からの走り幅跳び
跳び箱の台からの走り幅跳び



立ち幅跳び
輪跳び
川跳び
基礎感覚


リズム感覚……スキップ、ギャロップ、リズム縄跳び
平衡感覚………片足立ち、ケンケン跳び、平均台遊び、片足ずもう
跳感覚…………両足跳び、片足跳び、スキップ、ギャロップ

【参考文献】
 菊田明博著『THE りくじょう』
 根本正雄編『体育指導事典 −陸上運動編−』(明治図書)


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