根本直伝講座

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根本正雄(TOSS体育授業研究会代表)


. 走り幅跳びの習熟過程 T


 走り幅跳びの指導で気がつくのは、走り幅跳びの基礎感覚、基礎技能についての指導がなされていないことである。
 走ってきて遠くに跳べばよいという意識である。これは子供も教師も同じである。
 スピードを落とさないで踏み切って跳ぶことが、指導のポイントになる。教師の助言は次の内容が多い。
 「スピードを落とさないで走れ!」
 「強く踏み切れ!」
 「ももを高く上げろ!」
 これらの言葉掛けをしても子供の動きは変わらない。遠くに跳べない子供は、何回跳んでも記録が伸びない。
 器械運動のように、1時間の中で大きく変容することは少ない。走り幅跳びで記録を上げるにはどのようにしたらよいのであろうか。
 それには、走り幅跳びの基礎感覚、基礎技能を高めていくことである。
 低学年から中学年にかけて、走り幅跳びに必要な感覚づくり、技能づくりを行なうのである。
 それは遊びの中やゲームの中で身に付けていくことが出来る。どんな基礎感覚があり、どんな基礎技能があるのかを教師が理解していないと指導は出来ない。
 教師がどれだけ意識して指導に取り組むかで変わってくる。

1.走り幅跳びの基礎感覚

 走り幅跳びの運動構造は一般的には、助走、踏み切り、空中姿勢、着地の観点で分析されている。
 基礎感覚もそれらの観点から見ていくことが大切である。

 (1) リズムのある助走  リズム感覚
 (2) 片足で踏み切る   跳感覚
 (3) 空間に体を投げ出す 平衡感覚
 (4) 両足で着地する   平衡感覚

 助走で問題になるのは、リズムのあるスピードコントロールである。スピードがあれば記録が伸びるかというとそうではない。
 踏み切りを合わせるには、助走のスピードをコントロールしていく必要がある。そのためには、リズムがなければならない。
 リズムのある助走をするには、リズム感覚を育てておくことである。
 次は踏み切りの問題である。走り幅跳びの踏み切りは片足で行なう。
 日常の生活の中で、片足で行動するということは少ない。子供の動きを見ていると強い踏み切りが出来ていない。
 なぜなら、普段の生活の中で片足で跳ぶという経験がないからである。
 もし、強い踏み切りをさせたかったら、普段の体育の中で片足で跳ぶ動きづくりをしておくことである。片足での跳感覚が必要になる。
 踏み切った後、体は空中に投げ出される。空間での平衡感覚が必要になる。
 空間でバランスが崩れてしまったのでは遠くに跳べない。空間でのバランス感覚を育てていく必要がある。
 最後は着地である。着地は両足で行い、安定した着地が求められる。つまり平衡感覚が大事なのである。
 このようにみてくると、走り幅跳びの基礎感覚としては、リズム感覚、跳感覚、平衡感覚が考えられる。
 それでは、どのようにしたらそれらの感覚が育つのであろうか。

 リズム感覚 スキップ、ギャロップ、リズムなわとび
 平衡感覚 片足立ち、ケンケン跳び、平均台遊び、片足ずもう
 跳感覚 両足跳び、片足跳び、スキップ、ギャロップ

 これらの動きづくりを低学年から行なう。片足立ちであれば、片足で何秒たっていられるかを競争する。
 片足ずもうであれば、両手を合わせて、腕を組んで、背中を合わせてなどがある。
 跳感覚、平衡感覚、リズム感覚が一度に身に付く運動がある。輪を使ったケンケン跳び、ケン・パー跳びである。
 輪の数を増やしたり輪の間隔をあけることによって、運動量が増えていく。それにつれて、3つの感覚も高まっていく。

2.走り幅跳びの基礎技能

基礎技能としては次の内容を考えている。

 (1) 川跳び
 (2) 輪跳び
 (3) 立ち幅跳び
 (4) 跳び箱からの走り幅跳び
 (5) ロイター板からの走り幅跳び
 (6) 踏み切り板からの走り幅跳び

 川跳びは地面にラインを引いておいて、連続して跳んでいく。
 川幅を変えておいて、自分の跳びやすいところ選択させる。そこが跳べるようになったら、広めの川幅を選ばせて挑戦させていく。
 踏み切りは右足だけでなく、左足でも出来るようにする。両方の足で踏み切れることが大切である。
 この運動は障害走の基礎技能づくりとしても活用できる。連続して一定のリズムで跳んでいく中で、障害走に必要な技能が身に付く。
 体育館で行なう場合には、体操用の棒を並べて出来る。棒の間隔が自由に変えられるところが便利である。
 個人の競争やチームを作ってリレーを行ないながら、走り幅跳びに必要な技能が身に付けていく。
 輪跳びは基礎感覚づくりのところでも述べたように、輪を使ってのケンケン跳び、ケン・パー跳びを行なう。
 基礎感覚では片足で、リズムカルに跳べればよかったが、基礎技能づくりでは膝の沈み込みが出来るようにする。
 上に跳ぶためには、一度沈み込むことが必要である。走り幅跳びの場合も同じである。
 踏み切る前に一度沈み込む。これを直接言葉で「踏み切りの前に一度沈み込みなさい」と言っても無理である。
 輪跳びの中で自然に身に付くようにさせる。輪跳びで沈み込みが出来るようにするには、連続跳びをさせることである。
 しかも、輪の間隔を広げることである。広げた輪を跳ぶには、膝を深く曲げなければならない。さらに肩の引き上げもなされていく。
 必然的に走り幅跳びに必要な動きになっていく。ただ跳ばせていてもつまらないので、鬼ごっこをしたりジャンケンゲームをさせたりしていく。
 立ち幅跳びは、助走のない跳び方である。両足をそろえ、両手を振り上げて跳ぶ。形は走り幅跳びとまったく同じである。
 立ち幅跳びで大切なのは、膝の沈み込みを意識して跳ばせることである。
 膝が伸びたままだと上に上がらないために、距離は出ない。高く上がるためには、一度沈み込んでから跳ぶ。
 それと両手の振り上げである。足だけでは跳べない。両手の引き上げによって体が上がり、空中でのバランスも保てるのである。
 できたら反り跳びのように、体を反らして跳べるとよい。遠くに跳ぶためには、できるだけ空中に浮いていることである。
 「足の裏を空に向けなさい」という指示によって体が反る。立ち幅跳びによって、走り幅跳びの空中フォームが出来ていくのである。
 走り幅跳びに入る前に、跳び箱の台からの走り幅跳び、ロイター板からの走り幅跳び、踏み切り板からの走り幅跳びを経験させておく。
 踏み切りが平面よりも高さがある方が強く踏み切れる。しかも引き上げ足が高くなるので、空中でのフォームも作りやすい。
 三つを並べておいて、「どれが一番遠くに跳べるだろうか」と課題を出して挑戦させてもよい。
 あるいは、それぞれに記録会を行なって競争させてもよい。
 高く上がることによって、空間での間隔が出来ていくと同時にバランス感覚が出来ていく。
 このような基礎技能づくりを行なっておいてから、走り幅跳びの指導に入る。
 低学年からきちんとなされていればよいが、出来ていなければその学年で準備運動の時間を使って行なっていく。


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