根本直伝講座9

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根本正雄(TOSS体育授業研究会代表)

習熟過程を生かした体育指導

1.習熟過程に基づいた指導

 運動の出来ない子供が、どのように指導したら出来るようになるのか、TOSS体育はずっと追求をしてきました。
 その結果、出来ない子供を出来るようにするためには、習熟過程を押さえた指導が大切であることが分かってきました。
 習熟過程とは、運動が出来るようになっていく道筋です。一つの運動が出来ない時に、その種目だけを指導するのではなく、習熟過程から指導していくのです。
 そうすると指導がしやすくなります。なぜなら、出来ない子供がいた時に次の指導をしていけるからです。

1.なぜ出来ないのか習熟過程に照らして診断する。
2.診断に基づいた指導方法を考える。

 病院の医師が患者を直す時に最初に行なうのは診断です。病院に行けば診断する機器があり、症状に合わせて原因を調べていきます。
 熱は体温計で調べます。血圧は血圧計で調べます。全て目に見える数値で結果が分かるようになっています。
 勿論数値だけではなく、問診、触診などもあり、総合的に診断してきます。
 医師はそれに応じて治療を行なっていきます。薬を処方し、必要があれば手術も行ないます。客観的な診断があるから、それに応じた治療が出来るのです。
 診断に基づいて治療するので病気が早く直り、医師への信頼も高いのです。
 体育の指導も医師と同じような診断、治療が出来ないかと考えました。
 出来ない子供がいた時に、どうして出来ないのか、どこがつまずいているのかを客観的に診断する方法がないか、TOSS体育は模索してきました。
 もしそれがあれば指導の手立てが見えてきます。つまずきが分かればそのつまずきを取り除く指導をしていけばよいのです。客観的に数値になって表わせれば最高です。
 運動の診断の方法として考えたのが習熟過程なのです。習熟過程は一つの運動が出来るまでのステップが示してあります。

2.頭跳ね跳びの診断と指導

 頭跳ね跳びという種目があります。頭跳ね跳びが出来るためには、どんな運動が出来ていなければならないのでしょうか。
 頭跳ね跳びの習熟過程には、どんな基礎感覚、基礎技能が出来なければならないのかが次に示してあります。

頭跳ね跳び  〓 前方倒立回転跳び
 〓 屈腕跳ね跳び
 〓 頭跳ね跳び
 〓 首跳ね跳び
 〓 ステ−ジからの跳ね跳び
基礎技能  〓 膝の伸びた台上前転
 〓 台上前転
 〓 膝の伸びた前転
 〓 前転
 〓 壁倒立(補助倒立)
基礎感覚  〓 平衡感覚      平均台・片足ずもう
 〓 体を反らす感覚   ブリッジ・アンテナ
 〓 回転感覚      前転・後転
 〓 逆さ感覚      足打ち跳び・かえる倒立

 頭跳ね跳びが出来ない子供がいた時に、習熟過程に照らして動きを分析していけば、客観的な診断が出来るのです。
 その診断に基づいた指導が出来るようになっています。
 この習熟過程の特色は、頭跳ね跳びが出来るまでの道筋が系統的に示されていることです。
 頭跳ね跳びが出来るために、どんな基礎感覚、基礎技能が出来ればよいのかが分かるようになっています。
 頭跳ね跳びの出来ない子供にいきなり跳ね跳びを指導するのではなく、頭跳ね跳びに必要な基礎感覚、基礎技能を習得させていきます。
 その後に頭跳ね跳びの指導を行います。頭跳ね跳びの前にどんな技があり、その後どんな技に発展していくのかも示してあるので全体の系統が分かるのです。
 出来ない子供がいた時に、この習熟過程に基づいて一つ一つ診断していきます。そうしますと、必ず出来なくなる動きが出てきます。そこから練習をさせていくようにします。そこがつまずきのポイントなのです。
 つまずきが分かれば、指導方法を考えます。指導方法はすでに明らかにされているものがあればそれを活用します。
 なければ開発をしていきます。そのような手順を踏んでいけば、必ず出来るようになっていきます。
 頭跳ね跳びを行なう時には次の診断を行います。

1.かえる倒立 10秒
2.足打ち跳び 3回
3.片足振り上げ片足振り下り倒立  10回
4.うさぎとび 10Mを6〜7回
5.膝の伸びた前転 (マット)
6.後転 (マット)
7.側方倒立回転 (マット)
8.台上前転 (跳び箱)
9.膝の伸びた台上前転 (跳び箱)
10.ステージからの跳ね跳び  

 かえる倒立が10秒以上、足打ち跳びが3回以上出来ていれば基礎感覚は出来ていると診断します。
 片足振り上げ片足振り下り倒立が10回、うさぎとび跳びが10Mを6〜7回で出来れば第一段階の基礎技能は出来ています。
 最初の診断でここまでクリア出来ている子供は、すぐに頭跳ね跳びが出来ます。
 出来ていない子供はこの段階から指導していきます。あるいは準備運動の中にこれらの動きを入れて、一学期から練習させ習熟させていきます。この段階が出来ていなければ、上達は遅くなります。
 次は膝の伸びた前転・後転、側方倒立回転、台上前転、膝の伸びた台上前転が出来ているかを診断します。
 出来ていない動きがあれば、そこを練習させます。子供にも習熟過程に沿った学習カ−ドを持たせて指導していきます。
 つまずきのポイントを発見し、練習方法が分かる内容を示していくのです。
 以上のような習熟過程に基づいた診断と指導によって出来るようになっていくのです。
 『心と体を育てる体育授業上達セミナー全9巻』には、以上のような考え方で各領域・教材の習熟過程と指導方法をまとめてあります。
 誰でも出来るようになる道筋が分かり易く示してあります。ぜひ活用して、運動の出来る子供を育てていってほしいと願っています。


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